デグーマウスの低血糖症
こんにちは 院長の伊藤です。
本日ご紹介しますのは、デグーマウスの低血糖です。
低血糖とは、血液中のブドウ糖の値(血糖値)が低下している状態をさします。
この低血糖の状態が続きますと、いろいろな症状が出てきます。
そもそもブドウ糖は生体本能のエネルギー源となりますので、ブドウ糖が少なくなれば正常の細胞反応が行われなくなってしまいます。
具体的には、虚脱状態といって眼は虚ろになって動けなくなり、神経系のエネルギー不足により振戦(体の震え)、てんかん様発作、運動失調が起こります。
デグーマウスのチャーミーちゃんは、朝突然、動けなくなり振戦、てんかん様発作を起こしての来院です。
早速、血糖値を簡易型血糖値測定装置で測定しました。
もともと小型げっ歯類で採血量も微々たる量しか採血できませんので、日常使用する完全血球計算機では測定不可能です。
デグーマウスの採血は尻尾の尾静脈から行います。
血糖値の測定結果はLOと出ました。
このLo表示は、血糖値が20㎎/dlに満たないことを示します。
デグーマウスの正常血糖値は約70㎎/dlとして、不足分のブドウ糖を補給しなくてはなりません。
20%ブドウ糖シロップを強制的に飲ませます。
加えてショック状態を改善するためにプレドニゾロンを注射します。
ショック状態から低体温になっていますので、インキュベーターに入れて体を温めます。
ここで犬・猫であれば静脈を確保してブドウ糖の点滴を実施するのですが、残念ながらそれは小さなデグーにはできません。
飼い主様にチャ―ミーちゃんの容態が、厳しい状況であることをご理解して頂きました。
それでも、この処置で翌日のチャ―ミーちゃんは、体を少しずつ動かすこともできるようになり、自ら採食できるまでに回復しました。
2日間の入院でチャ―ミーちゃんは元気に退院することが出来ました。
以前、デグーマウスの白内障の記事で、デグーはインシュリンの分泌能・活性能が低くて、体内に入って来た糖を貯蔵すること
が苦手な齧歯類であることをお伝えしました。
つまりは、糖を過剰に摂取しすぎるとすぐに高血糖になり、ひいては糖尿病から白内障になるとの警告をいたしました。
飼い主様はその点を気にされ、非常に粗食な食生活を徹底されていたようです。
過ぎたるは及ばざるがごとし、と言うこともあります。
バランスの取れた食生活は大切であるという症例でした。
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