こんにちは 院長の伊藤です。

本日も引き続き、犬の異物誤飲症例をご紹介します。

今回は、湿布となります。

皆様の愛犬は、このような異物を誤飲しないよう日常生活でご注意いただければ幸いです。

トイプードルのシュシュ君(6歳、雄)は飼主様の湿布を誤飲したとのことで来院されました。

実は、このシュシュ君は免疫介在性溶血性貧血(IMHA)で、以前から当院で治療を受けて頂いています。

このIMHAとは、免疫グロブリンが結合した赤血球がマクロファージによって貪食され、赤血球が破壊される難しい疾病です。

その治療のため、シュシュ君は免疫抑制量のプレドニゾロンを投薬して頂いている最中でのアクシデントです。

まずは、レントゲン撮影を行いました。

下写真の黄色丸の部位が気になります。

下は患部をさらに拡大した写真です。

小腸内に湿布と思しき異物(下黄色丸)が確認されます。

飼い主様が誤飲した事実を確認している場合は、こちらも状況を把握しやすいです。

シュシュ君の場合はおそらく、腸閉塞になっている可能性が高いです。

直ぐに開腹し、異物摘出手術を行うこととしました。

麻酔前投薬を前足の静脈から実施します。

気管挿管を行います。

イソフルランによる全身麻酔(ガス麻酔)に導入して行きます。

シュシュ君は完全に麻酔下で管理されてます。

雄の場合はペニスの傍らを皮膚切開して、腹筋を切開します。

脂肪で包まれた小腸(空回腸)を体外に出したところです。

下写真の黄色矢印は異物が腸内を閉塞して腸の血液循環が滞り充血しています。

白矢印は、まさに異物が閉塞して血流障害を起こしてうっ血色を呈しています。

このままいけば、腸壊死に至ります。

IMHAに罹患しているため、腸管は貧血色を呈しています。

触診で異物が存在していると思える箇所にメスを入れます。

腸粘膜下に灰褐色の異物が見えます。

鉗子で異物を把持して、緩やかに牽引します。

幾重にも折りたたまれた湿布が出て来ました。

完全に湿布を摘出しました。

腸管の切開部を洗浄します。

患部に抗生剤を滴下します。

腸管切開後の縫合は、腸管の管腔径の狭窄を防ぐことが重要です。

切開部を横断するように縫合します。

異物が大きいこともあり、腸管を縦に大きく切開したため縫合すると多少いびつな形状になります。

重要な点は、腸内容物がスムーズに縫合部を通過できるかに尽きます。

腹腔内の脂肪(大網)で縫合部を包み、閉腹します。

麻酔から覚醒後のシュシュ君です。

摘出した湿布です。

10×12cmもの大きさがありました。

早急な対応が出来たのは幸いです。

おそらく、あと2日もしたら腸閉塞から腸壊死にいたり腹膜炎、敗血症と進んでいたことでしょう。

術後のシュシュ君です。

暫しの流動食生活です.。

元気も出てきて,術後の経過は良好です。

異物を誤飲したのを見たら、1時間以内にかかりつけの動物病院を受診して下さい。

シュシュ君、お疲れ様でした!

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