ウサギの子宮腺癌
こんにちは 院長の伊藤です。
ウサギは繁殖力に特化した動物です。
そして、多くの避妊していないウサギは平均4歳以降に子宮疾患を起こします。
その理由は、死ぬまで発情期が続くため、子宮が長期間にわたりエストロジェンに暴露されます。
その結果として、卵巣・子宮の疾病を引き起こします。
今回、ご紹介するのはホーランドロップのクルミちゃん(8歳4か月)です。
最近、食欲不振・尿量低下で来院されました。
尿検査をしたところ、潜血反応陽性で、顕微鏡下での赤血球を確認しました。
高齢でもあり、血尿がからんでくると子宮疾患の可能性が高くなります。
レントゲン写真でも下腹部に腫瘤(マス)の存在を認めます。
幸い胸部の腫瘍は認められませんでした。
腹部の膨満が著しいため、急遽、卵巣子宮摘出を前提とした試験的開腹手術を実施することとしました。
仰向けの姿勢で既に下腹部が膨隆しているのがお分かりいただけると思います。
早速メスを入れたところ、腹膜下より子宮とおぼしき組織が出てきました。
慎重に内容を外に出します。
卵巣から子宮角、子宮間膜、子宮頚部へと大きな腫瘍が形成されています。
これだけ腫瘍が広い範囲に及んでおり、出血量も多いと見込まれましたのでバイクランプによる止血を実施しました。
これだけ大きな腫瘍ですから、手術も長時間にわたる覚悟でいましたが、バイクランプによる迅速な止血でわずか30分ほどで終了しました。
腫瘍摘出後の腹腔内出血もなく、実にすっきりした感があります。
皮膚縫合を終え、麻酔の覚醒を待ちます。
無事、麻酔から覚醒したところです。
クルミちゃん、よく頑張ってくれました!
ウサギは犬猫の比べて組織自体が脆弱で取り扱いは細心の注意を要しますが、それ以上に麻酔の管理が大変です。
ですから、麻酔から確実に覚醒してくれた時が一番嬉しいです。
摘出した腫瘍は400gありました。ちなみにクルミちゃんの体重は1700gでした。
手術は成功したのですが、術後3日目にクルミちゃんは急逝されました。
原因はいろいろ考えられますが、体の4分の1にあたる腫瘍が循環血流量及び栄養分の多くを吸収していたはずですから、摘出後の循環血流量の低下に伴うショックが生じたと思われます。
犬のように輸血自体ができない動物なので、限界を感じます。
ただこの文章をご覧になっていただいてる皆様に申し上げたいのは、雌のウサギの子宮疾患発生率は犬よりも高く、予防するための唯一の手段は避妊手術しかありません。
可能な限り、若い1歳未満の時期に避妊手術をお受けいただくことを強くお勧めいたします。
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