こんにちは 院長の伊藤です。

本日ご紹介しますのは、股関節脱臼により大腿骨頭切除を実施した猫の症例です。

以前にも当院のHPにて犬の大腿骨頭切除手術のご紹介を致しました。

犬の場合、レッグ・ペルテス症や頻発する股関節脱臼などの救済処置として適応させて頂いてます。

犬の大腿骨頭切除手術については、こちらを参照下さい。

猫は交通事故や高所からの落下で股関節脱臼を起こし、緊急で大腿骨頭を切除する場合が多いです。

アメリカンショートヘアの銀君(1歳、雄)は、飼主様が銀君をシャンプー中に後足を引きずっていることに気づいて来院されました。

右後肢が左と比べて短く感じ、股関節を伸ばそうとするとかなり痛そうです。

早速、レントゲン撮影を実施しました。

右股関節が脱臼(下写真黄色丸)しています。

まずは、鎮静をかけて大腿骨頭を骨盤の大腿骨頭窩に戻すべく、無血的整復処置を試みましたが、整復が一旦上手く戻っても後肢を動かせると再脱臼をしてしまいす。

体重の小さい猫ならば疼痛を早く抑えて、後足の可動を復活させるために大腿骨頭の切除を勧めさせて頂きました。

結果、飼い主様のご了解を頂いて大腿骨頭切除手術を実施することとなりました。

全身麻酔下の銀君です。

大転子を目安に皮膚切開をします。

極力、筋肉を切開しないように助手に足首を外転かつ牽引させて、大腿骨頭を指先で触診して筋膜を切開・剥離していきます。

大腿骨頭を露出します。

線鋸を用いて大腿骨頭をカットしていきます。

大腿骨頭を離断しました。

摘出した骨頭です。

直ぐにレントゲン撮影を行い、大腿骨頭がしっかり切除されているか、取り残しがないか確認します。

黄色丸が切除した箇所です。

大腿骨頭の切除部は問題ありません。

あとは筋膜・皮膚を縫合して終了です。

麻酔覚醒直後の銀君です。

疼痛が治まるまでしばらく安静が必要です。

さて、術後5日目の銀君です。

患肢の跛行もなくなり、スムーズに歩行できるようになりました。

術後7日目で退院して頂くことになりました。

エリザベスカラーが邪魔で、キャリーに体が治まりにくい銀君ですが、元気に退院できて良かったです。

今回の銀君の股関節脱臼の原因は不明です。

飼い主様の申告では、銀君が高い所から飛び降りたりしたこともなく、激しい運動をした可能性もないだろうとの事。

いずれにせよ、今回の切除した大腿骨頭の部位と股関節の間には軟部組織による偽関節が形成され、体重の小さい猫であれば問題なく今後の生活は送れます。

銀君、お疲れ様でした!

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