ジリスの大腿骨骨折整復手術
こんにちは 院長の伊藤です。
本日、ご紹介するのはジリスの大腿骨骨折手術です。
感染症法第8章(感染症の病原体を媒介するおそれのある動物の輸入に関する措置)第54条に基づき、2003年からプレーリードッグの輸入が禁止になったことから、リチャードソンジリスが生態や外見がプレーリードッグに似ている輸入可能な動物として知られるようになりました。
リチャードソンジリスのベルちゃん(体重600g)は、飼主様が誤って踏んで大腿骨を骨折してしまいました。
下のレントゲン写真の黄色い丸の中が骨折している大腿骨です。
大腿骨の骨髄腔は約2㎜となく、骨折端から大転子(骨盤に近い側の大腿骨端)までの距離は3㎝もありません。
ジリスは大腿部の筋肉群が非常に発達しており、骨折部へのアプローチは大変難しいです。
大腿骨の整復には何通りもの手術法がありますが、小型のエキゾッチクアニマルですので術後の生活がストレスなく送れるためには、骨髄内に1.2㎜のピンを打ち込んで固定するピンニング法が最善と判断しました。
ピンニング法の弱点は、骨折部の回転運動に耐えられないことです。
術後にベルちゃんが激しい運動を控えてくれると良いのですが、こればかりは神のみぞ知るです。
早速、手術を実施しました。
上の写真に骨折した大腿骨の骨端が認められます。
斜めに大腿骨が割れた骨折端がお分かりになると思います。
いわゆる斜骨折と呼ばれる骨折形態です。
骨盤に近い側の骨折端(近位端)へピンを入れているところです。
近位端にピンを貫通させたら、今度はドリルのハンドルを180度向きを変えて遠位端へとピンを入れます。
骨折部をピンが貫通して固定できれば成功です。
この状態はレントゲン写真の方が分かりやすいと思います。
上の写真の黄色い丸が骨折部です。ピンが両骨折端をつないでいるのが分かります。
あとは筋膜や皮下組織を縫合して終了です。
ベルちゃんは長時間に及ぶ麻酔にも頑張って耐えてくれました。
麻酔覚醒後も特に暴れることもなく、手術当日はおとなしくしてくれました。
翌日、ベルちゃんに入っている段ボール箱に2つの大きな穴が開いていました。
ベルちゃんが齧った後です。でも脱走することなくその場に居てくれてました。
以前にプレーリードッグの大腿骨骨折の手術でピンニングを実施した際に、翌日ピンをプレーリー君が引き抜いて愕然とした経験がありますので、今回はエリザベスカラーも装着し万全の対策を施しました。
入院中は特に問題も起きず無事退院の日を迎えたベルちゃんです。
あとは骨折部が癒合してピンを抜去できる日(2か月ぐらい先)まで、大変だけどおとなしく過ごしていて欲しいと願います。
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