ハムスターの軟部組織肉腫
こんにちは 院長の伊藤です。
本日ご紹介しますのは、ハムスターの軟部組織肉腫です。
軟部組織肉腫は、皮膚・皮下に発生する軟部組織由来の悪性腫瘍であり、臨床的な挙動が類似するいくつかの腫瘍(線維肉腫、血管周皮腫、神経鞘腫、平滑筋肉腫など)の総称を指して呼びます。
発生する場所によって、筋肉・骨・神経組織へと浸潤する悪性腫瘍で、治療の第一選択は外科的摘出です。
キンクマハムスターのむい君(雄、1歳10か月齢、体重170g)は左側腹部に大きな腫瘤が2週間くらい前から出来たとのことで来院されました。
下写真の黄色丸が腫瘤です。
疼痛を伴ってか、むい君は左後足で引掻いて皮膚が一部裂けています。
細胞診で間葉系の紡錘形細胞(腫瘍細胞)が確認され、外科的摘出を勧めさせて頂きました。
むい君をイソフルランで麻酔導入します。
麻酔導入が完了し、腫瘍周囲をバリカン・剃刀で剃毛します。
下写真は自家製の麻酔マスクをして、維持麻酔をしている模様です。
電気メス(モノポーラ)で腫瘍の皮膚周囲を切開します。
腫瘍へ向けて、周囲組織から栄養血管が浸潤してます。
特に大きな出血もなく、摘出は完了です。
皮膚は5-0ナイロン糸で縫合します。
切除した皮膚の領域は広いため、どうしても縫合時には皮膚にテンションをかけます。
術後暴れる小型齧歯類においては、これぐらいの皮膚緊張は必要です。
むい君と摘出した腫瘍です。
無事、麻酔から覚醒したむい君です。
摘出した腫瘍です。
メスで割を入れました。
病理検査の低倍率像です。
この腫瘤は、高度の異型性を示す紡錘形細胞、多角形腫瘍細胞により構成されています。
高倍率像です。
腫瘍細胞は弱好酸性細胞質、大小不同を示す類円形から淡染核、明瞭な核小体を有してます。
腫瘍細胞の組織内の脈管内浸潤及び切除縁に腫瘍細胞は認められませんでした。
肉腫は、繊維芽細胞や他の間質細胞を起源とする非上皮性悪性腫瘍の総称です。
軟部組織肉腫は局所再発率が高いため、要経過観察です。
むい君、お疲れ様でした!
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