こんにちは 院長の伊藤です。

本日ご紹介しますのは、フクロモモンガの末端壊死症です。

フクロモモンガの中には、耳介部や四肢の肢端部が壊死を起こす症例があります。

その原因は、不明な点が多いです。

細菌感染か、末端部の血液循環不全か、免疫不全反応によるものなのか確定できない現状です。

フクロモモンガのラッキー君(雄、11か月齢、体重65g)は、両耳介部と四肢末端部が黒くなってきたとのことで来院されました。

下写真の黄色丸は壊死が進行している耳介部です。

当初、飼主様は自傷的に爪や耳を引掻いて傷を作ったと思われたようです。

確かにフクロモモンガはストレス性の自傷行為が多く、尻尾・陰部・肛門周囲等を自咬して問題となります。

下写真は爪の付根の皮膚が黒変しており(黄色矢印・黄色丸)、壊死が進行しているのが分かります。

本来、フクロモモンガは夜行性で樹上生活を行い、10頭前後のコロニーを作り行動する有袋類です。

社会性のある動物種のため、単独飼育や不適切な食餌などが原因でストレスを抱える個体が多いのが特徴です。

結果として、ストレス性の自傷行為が多発します。

ただ今回は、自傷行為は認められないとの飼主様からの申告があり、耳介部も四肢の末端部も膿皮症に代表される細菌感染は認められません。

耳ダニの感染も認められません。

今回の症例は、フクロモモンガにときおり見られる末端壊死症と思われます。

実際、この末端壊死症は、耳介辺縁壊死症と同時に四肢端の壊死が見られることがあります。

原因は不明で、血行不良が背景にあり結果として壊死に至ります。

フクロモモンガは非常にデリケートな個体が多く、患部を自傷行為で壊死部がさらに拡大していく可能性が高いです。

結局、エリザベスカラーを装着して、抗生剤や消炎剤を投薬します。

壊死部は近日中に脱落すると思われます。

今後のラッキー君の経過を観察していきます。

ラッキー君、頑張りましょう!

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