こんにちは 院長の伊藤です。

現在、アーカイブシリーズで犬の異物誤飲の症例を挙げておりますが、本日はトカゲの異物誤飲の事例を載せます。

飼育槽の床材としてのウォールナッツ(胡桃)サンドを誤食したヒョウモントカゲです。

ヒョウモントカゲモドキのウルガ―君(性別・年齢不明)は下腹部が急に腫れ始めたとのことで来院されました。

下写真にあるように右下腹部(下写真黄色丸)が腫大しています。

右の下腹部が腫大したため、右後肢の爪が皮膚に引っかかり、皮膚が裂けています。

腫大している右下腹部の反対側(左下腹部)を軽く圧迫すると、さらに腹部は大きく出て来ます(下写真黄色丸)。

恐らくは腹壁が裂けて、腸管が脱出(腹部ヘルニア)を起こしている可能性があります。

レントゲン写真を撮影しました。

白く描出されているのが腸管内の異物です。

明らかに腹部から腸管脱出しています。

側面の画像では、白い顆粒状の異物が確認されます。

飼い主様からの稟告では、恐らく床材を誤飲している可能性が高いようなので外科的に異物を摘出することにしました。

ウォールナッツサンドを床材としてるため、この異物はウォールナッツサンドであると推定されます。

ウルガ―君に全身麻酔を実施します。

ほどなくウルガ―君は麻酔導入が完了して伏臥姿勢をとります。

麻酔導入箱から出て頂き、維持麻酔に切り替えます。

爪で掻破して皮膚が開いているのが痛々しいですね。

皮膚を硬性メスで切開します。

脱出した腸管が認められます。

さらに術野を広げるため皮膚を切開します。

幸い腸管は壊死を起こしておらず、閉塞部の腸管を外科鋏で切開します。

腸内に詰まっている異物を滅菌綿棒で掻き出します。

大量のウォールナッツ・サンドを誤飲しているのが分かります。

さらに下流の閉塞を起こしている部位を慎重に圧迫して、切開部からウォールナッツ・サンドを排出します。

腸管切開部を生理食塩水で洗浄します。

患部に抗生剤を滴下します。

5-0の合成吸収糸で腸管を縫合します。

切開部の縫合を終了します。

さらに腹筋・腹膜部を縫合し、腹壁ヘルニアを整復します。

腹壁縫合を終了します。

最後に5-0ナイロン糸で皮膚縫合を行います。

手術はこれで終了です。

手術後のウルガ―君のレントゲン写真です。

腸管閉塞(イレウス)を起こしていたウォールナッツ・サンドは回収出来ました。

体温が低下しているためウルガ―君を温めています。

摘出したウォールナッツ・サンドです。

麻酔から覚醒して、威嚇してるウルガ―君です。

覚醒は良好です。

術後2時間でケース内を徘徊しています。

腹部ヘルニアが広範囲に及んでおり、それに伴い皮膚が伸張し、縫合する段になって皮膚のたるみが著しいです。

ウルガ―君の術後は良好で、食欲もあります。

床材の種類によっては、食餌と誤認して食べてしまう場合があります。

ウォールナッツ・サンドのように消化できない異物を多量に誤飲した場合、今回の様に腸閉塞(イレウス)になります。

このまま様子見で数日経過したら、腸管は壊死を起こします。

犬猫ならば壊死腸管を切除、腸管の吻合手術という流れになりますが、こと小さな爬虫類においては困難を極めると思います。

誤飲の可能性がある床材は使用しないこと。

これに尽きると思います。

 

ウルガ―君、お疲れ様でした!

 

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