こんにちは 院長の伊藤です。

ペットの高齢化が話題になってから久しいですね。

ヒトでも高齢化に伴い、関節症対策としてのグルコサミンやコンドロイチン硫酸のサプリメントがCMで流れたりします。

犬猫の世界でも関節症になるケースは年々増えています。

本日は、猫の関節症についてコメントさせて頂きます。

雑種猫のボブ君(15歳、雄)は最近、動きが鈍くなり高い所へ行きたがらなくなったと来院されました。

特に後足の動きが悪いとのことで、触診をしましたところ膝の関節が大きく腫れているのが分かりました。

試験的にボブ君に歩行をしてもらいました。

動画で載せることが出来ればよいのですが、非常にぎこちない後足をかばうような歩行です。

レントゲン写真を撮りました。

仰臥姿勢です。

膝関節の部分を拡大します。

異常な部位を黄色丸で囲みます。

次に側臥姿勢です。

拡大写真です。

同じく異常部位を黄色丸で囲みます。

ボブ君の膝関節は既に変形が始まっています。

関節軟骨がすり減って変形が生じ、硬くなって石灰化し、関節が正常に稼働しなくなっています。

加えて骨棘(こつきょく)と言われる骨のトゲが何ヶ所も形成されています。

骨棘は、同じ個所が何回も繰り返し炎症を起こして、部分的に骨が過剰に増殖して形成されます。

これらの変形骨が神経を刺激したり、関節周辺に炎症を引き起こし、慢性的疼痛が生じます。

この症状を称して変形性関節症と呼びます。

そもそもこの変形性関節炎は何が原因で生じるのでしょうか?

12歳以上の中高齢の猫に認められる点から、年齢によるところが大きいようです。

加齢による筋力低下から、関節に加わる負荷が大きくなり、関節軟骨が摩耗して発症するそうです。

その一方で、若齢猫でも認められるケースもあるそうで、遺伝の可能性も示唆されてます。

体質的に肥満猫も発症しやすようです。

変形性関節症は慢性的に症状が進行していく疾患です。

変性した関節を元の様に回復させることは困難です。

治療の柱は、疼痛を和らげることです。

そのために非ステロイド系の消炎剤を投与したり、グルコサミンやコンドロイチン硫酸を含んだ猫用のサプリメントも有効とされます。

同じ関節症でも犬の場合は、症状として表だって分かりやすいのですが、猫は基本的に症状を隠します。

痛くても無理をして平静を装う猫は多いようです。

実際、猫の変形性関節症の場合、足の引きずりがあまりなく飼い主が気づかずに何年も経過してしまう事が多いようです。

そのため、シニア世代(7,8歳以降)になったら定期検診を受けてレントゲン撮影をして下さい。

加えて以下の仕草がないか良く見ておいて下さい。

1:おもちゃで遊ばなくなった。

2:動かなくなった。

3:高い所にジャンプしなくなった。

4:上下運動する高さが以前より低くなった。

5:起き上がる時の動作がゆっくりになった。

以上から一つでも該当するものがあったら、最寄りの動物病院を受診して下さい。

ボブ君、これからは疼痛管理でしっかり歩行できるよう治療していきましょう!

 

 

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