犬の輪ゴムによる縛創(その2)
こんにちは 院長の伊藤です。
本日ご紹介しますのは、犬に輪ゴムをかけ、その結果として縛創(ばくそう)と呼ばれる創傷を招いた一例です。
以前人もこの縛創についてコメントした記事がありますので、興味のある方はこちらを参照して下さい。
トイプードルのクロキリ君(去勢済、体重5.8kg)は左の腋下部あたりに傷がある(下写真黄色丸)とのことで来院されました。
傷は何かでザックリ切られたような切創を呈していました。
左の腋下部から上腕の外側面にかけて毛玉が直線状に形成されており、毛玉の核には何やら弾力性のある紐状の物体が絡んでいます。
注意深く毛玉を解きほぐしていくと、現れたのは髪留め用の輪ゴム(下写真)でした。
飼い主様自身、覚えがないとのことですが、小さなお子さんのいるご家庭では、遊び半分で輪ゴムを犬の足にかけて、そのまま忘れ去られているケースがあります。
クロキリ君の場合、体毛が黒で輪ゴムも黒色であったため、気づかない内に輪ゴムが皮膚に食い込み、皮膚から真皮にかけて切創を形成したものと考えられます。
この切創を紐状の異物による絞扼による傷で縛創と呼びます。
広範囲に出来た縛創なので、皮膚をトリミングして外科的に縫合する事となりました。
クロキリ君を全身麻酔します。
クロキリ君が完全に寝てしまってから、患部周囲を剃毛します。
カミソリで剃毛します。
輪ゴムが食い込んで、滲出液が溢れ、一部痂皮を形成していました。
患部をまず鋭匙で掻爬します。
出来るだけ掻爬することで、患部に新しく出血を起こします。
新鮮創を作ることで、縛創部を縫合後に綺麗に皮膚癒合させます。
髪留めゴムをかけた左腋下部の全周の皮膚が、切れているのがお分かり頂けると思います。
輪ゴムといえどその破壊力は侮れないです。
傷口の掻爬が終了したところで、生理食塩水で洗浄します。
次に皮膚を縫合していきます。
皮膚のたるみが出来そうな部位は、新たに皮膚をカットして縫合部を調整します。
腋下部の全周を縫合します。
縫合が終了しました。
縫合部に抗生剤の軟膏を塗布しました。
麻酔から覚醒したクロキリ君です。
手術後、特に問題なくクロキリ君は退院して頂きました。
下写真は、2週間後の抜糸のために来院されたクロキリ君です。
縛創部は綺麗に皮膚癒合しており、抜糸も大丈夫です。
邪魔なカラーを外すことが出来ます。
クロキリ君、お疲れ様でした!
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