抜歯を実施する際にエレベーターという器具(下写真参照)を使用します。

このエレベーターの用途は歯根膜の線維を断裂し、歯根を歯槽骨から脱臼させるといった抜歯処置の中でも重要な工程を担っています。

抜歯を行う歯の種類によっても使用するエレベーターのサイズも変わりますし、エレベーターの動かし方も変化が必要となります。

確実に歯根膜を剥離しないと抜歯鉗子で抜歯したい歯を引き抜こうとしたところで、途中から歯が折れてしまうこともあります。

折れた歯根を残すことは後々、問題を起こしますので残根を引き抜くことは技術的にも大変です。

加えて、力を加えすぎて顎骨折を招いてしまう場合もあります。

今回、抜歯時のエレベーター処置を迅速・簡便に行うために歯石除去用の超音波スケーラーのチップ先に歯根膜剥離用チップなるものを装着し、その使用感についてコメントします。

黄色丸に示してあるチップが歯根膜剥離用チップです。

超音波の力を利用して歯根膜線維自体または歯根膜を歯根面から切離し、歯槽骨と歯根面の間に隙間を作ることができるチップだそうです。

遺残犬歯のトイプードルでこのチップを使用してみました。

遺残犬歯の歯根部に向けて、歯肉との隙間にチップをゆっくり入れていきます。

黄色の丸に示したようにチップが速やかに歯根部までスムーズに入っていきます。

歯根膜の剥離については、思っていたよりはスムーズな動きで剥離を完遂しました。

超音波による局所の温熱刺激を避けるため一定の位置に定めず、チップの先端部を上下左右にスライド移動させながら行うとよいそうです。

出来る限り15秒以内で使用せよと謳ってあります。

ただハンドルに装着しますので、一般のエレベーターと異なり、チップの可動域がどうしても限られる点が扱いにくく感じます。

歯根膜を剥離した後のエレベーターは容易に入れることが可能ですし、抜歯も確実にできそうに思いました。

ただ昔ながらのエレベーター操作が自分にはしっくりくるようです。

抜歯が手ごわそうな歯根部の深い歯を対象に、今後はこのチップを使用していくつもりでいます。

 

抜歯のための色んな器具も考案されているんだな。
 

 
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