以前、耳の毛玉取りにはご注意を!!で飼い主様が誤って耳をカットしてしまった事例をご紹介しました。

今回は口周りの毛をカットしようとして、誤って下をカットしてしまった事例紹介です。

エル君は非常に舌の長いヨークシャテリアです。

飼い主様が口周りの毛が長く、気になるとのことで鋏でカットされたのですが・・・・・・。

舌を少し鋏で切ってしまったようで、出血が止まらなくなってしまいました。

甚だしい出血です。

エル君自身は出血により、パニックに陥り、激しい呼吸を繰り返しています。

舌の動きがあまりに速く、患部を確認することさえできません。

結局、全身麻酔を実施して寝てもらっている間に処置をすることにしました。

よく見ますと下写真の黄色丸に囲んだ部分から出血していることが判明しました。

約3~4㎜ほどの切開創です。

舌の細動脈を離断したようです。

舌は骨格を持たない代わりに強靭な線維性組織を舌全体に分布させています。

この線維性組織の各線維が3次元的な運動を可能にしています。

5‐0の吸収性縫合糸で切開創を縫合します。

縫合終了した段階で出血もしっかり止まりました。

エル君はしばらく舌の違和感を気にしていたようですが、とりあえず無事処置も終了しました。

その後、1週間して抜糸にエル君は来院されました。

よくよくご覧いただくと、本当にエル君の舌の長さに驚きます。

この舌の長さでは、飼主様が舌を誤って切ってしまうのもうなずけます。

抜糸は麻酔もしてませんし、この達者な舌使いに翻弄され、苦労しました。

でも患部はしっかり治癒していました。

舌は皮膚と異なり、非常に血管に富んだ組織です。

ほんのちょっとした傷であれ、部位によっては激しい出血を伴う点にご注意下さいね!

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