アーカイブシリーズ 犬の異物誤飲(線状異物)
本日も引き続き、アーカイブシリーズで犬の異物誤飲を載せます。
過去の記事ですが、細かな手術の描写は控えて、患部の写真のみに留めてあります。
線状異物は開腹手術を要する事例が多いため、誤飲させぬ様ご注意ください。
犬は色んな異物を誤飲します。
以前から具体例をご紹介させて頂いておりますが、今回は線状異物を誤飲してしまった症例です。
線状異物誤飲とは?
実は紐や糸のように直線の形状をしたものを線状といいますが、この線状の物体を誤飲してしまうことを指します。
今回ご紹介するミニュチュア・ダックス君は、飼主様が気づかれた時には、既にお尻から紐状の物体が出ているとのことで、慌てて来院されました。
下の写真の黄色矢印で示したものが線状異物です。
とっさにこの紐状の物体を引っこ抜いてしまいたい衝動にかられますが、ここで引いてしまいますと大変なことになります。
このダックス君の飼主様は賢明であったと思います。
多くの線状異物は腸の中を蠕動運動と共に下流に移動していきますが、長い線状異物であるほど腸はくびれていますので何ヶ所か引っかかってしまいます。
結果としてアコーディオン・カーテンを閉めるかのように腸が巻き上げられることになります。
この状態のまま肛門側から牽引しますと腸は線状異物により、ずたずたに切れてしまう事になります。
切れてしまった腸からは内容物が腹腔内に漏れ出て、腹膜炎から敗血症へと事態は急変します。
結局、開腹して線状異物が引っかかっている箇所を突き止め(おそらく複数個所のことが多いです。)、その個所を腸を切開して異物を適切に摘出する必要があります。
実際に開腹したのが下の写真です。
下の写真で、黄色の丸で囲んだ所がアコーディオン・カーテン状に巻き上げられている腸です。
腸の色が充血しているのがお分かりになりますか?
今回は3か所、線状異物が腸内で閉塞してましたので、腸を3か所切開して解除しました。
この状態で長時間放置されますと、腸が血行障害に陥り壊死を起こします。
犬に限らず猫もこの線状異物を大好きな子が多く、毛糸や紐を相手に遊びますが、誤飲に至るケースもあります。
動物の身近に線状異物を置かないように、よくよくお気を付け下さい。