こんにちは 院長の伊藤です。

先回の記事でアーカイブシリーズ 犬の異物誤飲シリーズは終了させて頂きます。

今回は、猫の異物誤飲をアーカイブで載せます。

猫は犬のように、無節操に異物を誤飲はしませんが、それでも嗜好性はあり、大きさや形状的に好む異物は存在します。

それではご覧ください。

こんにちは 院長の伊藤です。

犬と比べて猫の異物誤飲は少ないのですが、今回は椅子のクッション材としてのウレタンを誤飲した猫の話です。

ラグドールのしずくちゃん(7か月齢 雌 体重3.1kg)は朝から嘔吐を頻発、食欲廃絶、血便とのことで来院されました。

しずくちゃんはどことなく沈鬱な表情に見えます。

レントゲン撮影を実施しました。

下写真の黄色丸の箇所が気になります。

異物を誤飲した際に腸で閉塞が生じますと閉塞部位周辺にガスが貯留します。

そしてガスとのコントラストで異物の所在が明らかになる場合もあります。

患部を拡大した写真です。

白く映し出された球状の物体が気になります。

飼い主様は特にしずくちゃんが異物誤飲をする心当たりはないとのことでした。

猫は毛糸などの線状異物の誤飲が多いのですが、今回は数センチの固形異物のようです。

5日前から血便が出ているとのことですから、ひょっとしたら1週間前には異物誤飲している可能性があります。

状況に応じて、異物誤飲の場合は消化管造影したりしますが、時間の経過を考慮して試験的開腹をすぐに行いました。

麻酔前投薬を橈側皮静脈から注入します。

気管挿管してイソフルランガスを流し維持麻酔します。

メスを入れる箇所の周辺を剃毛・消毒します。

ドレープをかけてこれから試験的開腹手術を実施します。

腹筋を正中線に沿って切開して行きます。

空回腸を指先で丹念に異物がないか調べて行きます。

下写真黄色矢印の部位が空回腸に何か詰まっています。

腸内はこの異物(下写真黄色丸)により完全閉塞しています。

つまり腸内容の流動が異物によりストップしています。

腸蠕動運動に伴い、腸内容物が流動して腸内環境・腸内細菌は安定します。

異物により腸蠕動停止すると腸内細菌が過剰に増殖し、毒素やガスを産生します。

加えて腸の血行障害から腸壊死に至ることもあります。

しずくちゃんの腸管は異物閉塞部位の上流・下流共に変色もなく、壊死は認められません。

閉塞部位に直接メスを入れ、異物を摘出します。

弾力性のあるウレタンの異物が摘出されました。

定法通り、腸を単純結紮法によりモノフィラメント吸収糸で縫合して行きます。

若干漏出して縫合部に付着した腸内容を洗浄します。

縫合部に抗生剤を滴下します。

縫合部は1cmほどに納めました。

腸全体でみるとほんのわずかのエリアです。

腸管や周辺の組織との癒着を防ぐために大網と呼ばれる脂肪組織を縫合部にかぶせて閉腹します。

これで手術は終了です。

麻酔覚醒直後のしずくちゃんです。

心なし、すっきりした表情にも見えます。

手術翌日のしずくちゃんです。

腸を切開していますので、しばらく消化に良い流動食から食餌管理します。

下写真は腸内の異物です。

素材はウレタンのようです。

飼い主様に確認したところ、椅子の背もたれ内部のクッション材を、爪とぎの時にほじり出していたようです。

柔らかな素材ですから、衝動的に口にしてしまったのでしょうか。

術後6日目にしずくちゃんは退院されました。

今回の様に飼主様が気づかれていない内に異物誤飲すると色々な検査が必要になったり、腸が壊死を起こしたり大変なケースが多いです。

レントゲン写真でたまたま異物を思わせる所見がありましたから、即手術で大事に至らなくて良かったです。

しずくちゃん、お疲れ様でした!

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