こんにちは 院長の伊藤です。

残暑が続きますが、皆様元気にお過ごしでしょうか?

日常業務に追われて、なかなかブログの更新が出来ずにおります。

本日もアーカイブシリーズで犬の誤飲症例を載せます。

この半年の間に取り溜めしたデータ・資料をまとめて、早急に新ネタを掲載しますのお持ち下さい。

本日ご紹介しますのは、久しぶりとなります犬の異物誤飲シリーズです。

色んな異物を犬は誤飲します。

飼い主様からすれば、意外な物を誤飲しますので、どんな異物を誤飲するのかをご紹介しています。

皆様の愛犬は、このような異物を誤飲しないよう日常生活でご注意いただければ幸いです。

トイプードルのシュシュ君(6歳、雄)は飼主様の湿布を誤飲したとのことで来院されました。

実は、このシュシュ君は免疫介在性溶血性貧血(IMHA)で、以前から当院で治療を受けて頂いています。

このIMHAとは、免疫グロブリンが結合した赤血球がマクロファージによって貪食され、赤血球が破壊される難しい疾病です。

その治療のため、シュシュ君は免疫抑制量のプレドニゾロンを投薬して頂いている最中でのアクシデントです。

シュシュ君は飼主様が使用している湿布を誤食してしまったとのことで来院されました。

まずは、レントゲン撮影を行いました。

異物誤飲で最初の1時間くらいなら、胃の中に異物が停留していることが多いです。

しかし、今回は胃の中はガスしか認められません。

下写真の黄色丸の部位が気になります。

黄色丸は空回腸部に当たります。

下は患部をさらに拡大した写真です。

小腸内に湿布と思しき異物(下黄色丸)が確認されます。

飼い主様が誤飲した事実を確認している場合は、こちらも状況を把握しやすいです。

シュシュ君の場合はおそらく、腸閉塞になっている可能性が高いです。

直ぐに開腹し、異物摘出手術を行うこととしました。

麻酔前投薬を前足の橈側皮静脈から行います。

気管挿管を行います。

イソフルランによる全身麻酔を行います。

生体情報モニターでシュシュ君は安定した麻酔下にあることが確認できます。

雄の場合はペニスの傍らを皮膚切開して、腹筋を切開します。

脂肪で包まれた小腸(空回腸)を体外に出したところです。

シュシュ君はIMHAのため、腸の色が全体的に貧血色をしているのがお分かり頂けると思います。

下写真の黄色矢印は異物が腸内を閉塞して腸の血液循環が滞り、この個所だけ充血色を呈しています。

白矢印は、異物そのものを示しています。

このままいけば、腸壊死に至ります。

触診で異物が存在していると思える箇所にメスを入れます。

腸粘膜下に灰褐色の異物が見えます。

鉗子で異物を把持して、緩やかに牽引します。

幾重にも折りたたまれた湿布が出て来ました。

完全に湿布を摘出しました。

腸管の切開部を洗浄します。

患部に抗生剤を滴下します。

腸管切開後の縫合は、腸管の管腔径の狭窄を防ぐことが重要です。

切開部を横断するように縫合します。

異物が大きいこともあり、腸管を縦に大きく切開したため縫合すると多少いびつな形状になります。

重要な点は、腸内容物がスムーズに縫合部を通過できるかに尽きます。

腹腔内の脂肪(大網)で縫合部を包み、閉腹します。

麻酔から覚醒後のシュシュ君です。

摘出した湿布です。

10×12cmもの大きさがありました。

早急な対応が出来たのは幸いです。

おそらく、あと2日もしたら腸閉塞から腸壊死にいたり腹膜炎、敗血症と進んでいたことでしょう。

術後のシュシュ君です。

暫しの流動食生活です.。

元気も出てきて,術後の経過は良好です。

異物を誤飲したのを見たら、1時間以内にかかりつけの動物病院を受診して下さい。

シュシュ君、お疲れ様でした!

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