こんにちは 院長の伊藤です。

本日ご紹介しますのは、フェレットの異物誤飲です。

過去にもフェレットの異物誤飲をご紹介していますので、宜しかったら以下にリンクを貼りましたので、ご参照下さい。

フェレットの異物誤飲 フェレットの異物誤飲(その2)

フェレットの異物誤飲は、犬のそれと異なり胃内で異物を見つけるケースは比較的少なく、ほとんど腸内に降りてきてから症状(悪心、流涎、下痢)を訴えて来院することが多いようです。

今回は、2日前から食欲がなくお腹が張り出したとのことでフェレットのプルちゃん(2歳7カ月齢、避妊済み、体重700g)は来院されました。

口腔内から出血(黄色矢印)が認められます。

フェレットの嘔吐は犬のように頻発することはなく、最初は悪心、流涎が症状として現れます。

この時、前足で口元を引掻いたりしますので、今回のプルちゃんの出血はそれが原因かもしれません。

触診では胃が鼓張しており、レントゲン撮影を実施しました。

下写真で胃内にガスが貯留してます(黄色矢印)。

側臥の写真では胃の鼓張(黄色丸)が激しく、腹腔内を胃が占めている状態です。

胃が鼓張しているということは、胃から小腸にかけて蠕動が停滞して内容物が先に送り込めずに、胃腸内発酵によりガスが産生されている可能性があります。

プルちゃんの年齢から異物誤飲の可能性を疑い、硫酸バリウムを飲んでもらい消化管造影を実施しました。

下写真はバリウムを飲まされているプルちゃんです。

フェレットは肉食獣であり、消化管は細く、盲腸を欠いた単純な形態を呈します。

食物を摂食してから排泄するまでの所要時間は、肉を基本とした場合は148~219分(Bauck,L.S.(1985):Salivary mucocele in 2 ferrets. Mod Vet Pract.66:337-339.)と報告されてます。

フェレットは肉食獣であるため、摂食後から排泄までの所要時間が短いのが特徴です。

下写真はバリウム投与直後のレントゲン像です。

黄色矢印は胃内のバリウムを示します。

次いで、15分ごとにレントゲン撮影を行いました。

フェレットの場合は、約2.5~3時間くらいでバリウムは直腸に到達します。

下写真は3時間後の画像です。

空回腸部(下写真黄色丸)にバリウムが残っているのがお分かり頂けると思います。

バリウムが残存してる部位の拡大像です。

側臥の画像です。

黄色矢印は同じく投与3時間後のバリウム残存部です。

拡大像です。

バリウム投与して3時間以降のレントゲン像でも特に残存部の移動は無く、おそらくこの部位で異物が腸閉塞を引き起こしている可能性があります。

血液検査を実施し、全身麻酔にプルちゃんが耐えられるのを確認した後、試験的開腹を行うことにしました。

プルちゃんの前足に留置針をセットし、点滴の準備をします。

視線が定まっていないプルちゃんです。

イソフルランで麻酔導入を行っています。

麻酔導入完了後、維持麻酔してます。

下腹部の剃毛です。

下腹部、特に胃の鼓張が高度です。

全身麻酔も安定してきましたので、これから開腹に移ります。

臍下から正中線に沿ってメスを入れていきます。

ガスで鼓張している胃が開腹と同時に飛び出してきました。

消化管造影でバリウムが残存していた部位を触診で探査します。

下写真黄色丸の部位に硬い内容物が小腸に閉塞(イレウス)を起こしているのが判明しました。

拡大した像です。

この硬い異物(黄色丸)の頭側側(胃側)は小腸が炎症を起こして赤くなっています(青矢印)。

閉塞部にメスを入れます。

腸内には腸内容物と共に毛球が詰まっており、これが腸閉塞(イレウス)の原因になっていたようです。

毛球を摘出すると閉塞していた箇所から一挙に水分(腸液)及びガスが溢れ出しました。

切開部を5-0モノフィラメント合成吸収糸で縫合します。

単純結紮縫合で患部は縫合します。

腸切開部の縫合は終了です。

患部を生理食塩水で十分に洗浄します。

腹筋を縫合しました。

皮膚を縫合して手術は終了です。

イソフルランを切り、酸素吸入のみで覚醒を待ちます。

麻酔から覚醒直後のプルちゃんです。

麻酔から完全に覚醒しきってない点や患部の痛みからもありますが、起立できないでいるプルちゃんです。

手術の翌日のプルちゃんです。

流動食を進んで飲めるようになっています。

スタッフにも愛想してくれます。

術後5日目で退院時のプルちゃんです。

排便も出来、胃の鼓張も治まりました。

缶詰などの柔らかい食餌をしばらくは食べて頂くことになります。

退院して8日目のプルちゃんです。

傷口も綺麗に癒合しましたので、抜糸することになりました。

さて、今回摘出した毛球です。

何層にも毛球が畳み込まれて、10×10×25㎜の大きさに成長してます。

換毛期には毛づくろいした毛を飲み込んでしまうケースは多いです。

毛が消化管内でどんな挙動を示すか予測が出来ません。

今回の様に合体して大きくなると小腸内で閉塞に至ります。

日常的に換毛期にはラキサトーンなど、毛球予防薬やブラッシングを励行して下さい。

術後の経過も良好で食欲、排便もしっかり出来る様になりました。

プルちゃん、お疲れ様でした!

 

 

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