股関節脱臼は、たびたび臨床の現場で遭遇します。

その都度、脱臼の状態に応じて徒手にて整復処置を施したり、外科的に観血的手術を実施したりします。

今年の4月のことです。

トイプードルのブイ君(♂、6歳)は、股関節が外れたみたいとのことで来院されました。

右後肢を拳上して、かなり痛そうにしています。

患部に触ろうとすると咬みついてきますので、口輪をさせて頂きました。

早速、レントゲン撮影を実施しました。

黄色丸で囲んだ部分が股関節です。

完全に脱臼しているのがお分かり頂けると思います。

徒手で整復を試みますが、うまく整復できません。

結局、患部にメスを入れて観血的に整復手術を行うこととしました。

翌日、オペをすることとして万全の準備を整えオペ当日のこと。

ブイ君が昨日まで右肢を上げていたのが、しっかり床面に肢を着けており普通に歩行してます。

もしやとと思い、レントゲンを撮りました。

なんとしっかり股関節が元通りに嵌っています。

昨日、頑張って整復をして駄目だったのに、自分で治してしまったのでしょうか?

いずれにしても、オペは一旦中止して経過を観察することとしました。

飼い主様もホット一安心されたようです。

しかし、簡単に嵌ってしまう股関節はまた何かの拍子に外れる可能性も高いと言えます。

今後、よくよく注意のことをお伝えして、ブイ君は退院されました。

そして二か月経過した先日のこと、ブイ君はまた股関節が外れたと来院されました。

レントゲン撮影しました。

また同じ股関節脱臼です。

2度目の股関節脱臼となりますと、徒手的に整復できたとしてもまた外れる可能性は十分あります。

救済処置として、大腿骨頭を切除する手術を実施することとしました。

一旦帰宅して頂き、我々もオペの準備をし、オペ当日を迎えました。

診察室に入ってみえた飼主様の第一声が、「また嵌ったみたいです!」

レントゲンで確認しました。

しっかり、嵌っています。

2度の股関節脱臼で、2度とも手術直前に関節が元通り嵌ってしまうケースは、私の獣医師歴の中でも初めてです。

実際、再度嵌った股関節を観血的手術で再脱臼させてまで、手術するのも心情的にはばかられるところです。

ブイ君の場合は、股関節形成不全はなく、おそらく強い外力が加わった結果としての脱臼と思われます。

今後は飼育環境(滑りやすい床面の改善)、日常の行動(階段の上り下り、後肢での二本立ちの制限)に留意して頂く必要があります。

次に脱臼された時は残念ながら、間違いなく大腿骨頭切除手術が必要となります。

ブイ君、再脱臼しないよう気をつけてね!

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