本日、高周波手術装置のデモを実施しました。
高周波等といっても一言でいえば、進化した電気メスシステムといったところでしょうか。

従来の電圧を上げて、組織に損傷を与えて切開・凝固するのではなく、組織に応じてコンピューターによって自動的に出力を調整して最良の切れ味と強い止血力を発揮するシステムだそうです。

先回、乳腺腫瘍と半導体レーザーの話で止血について触れました。
実は、この高周波手術システムの特徴は専用の器具で血管を鋏んで70~80℃の熱で融合させること(シーリング)が可能です。
つまりシーリングして完全に止血を完了できるのです。
血管の直径7mmまでがシーリング可能です。
7mmと言いますとドーベルマンやシェパード等の大型犬の腹大動脈に匹敵します。
ヒトでいえば、心臓の冠状動脈に匹敵します。
昔、研究員として、人工血管の開発に携わっていた私としては非常に興味のあるシステムです。

一般には動脈の止血には糸を用いて血管を結紮して行います。
日常的に実施している避妊・去勢手術にしても糸(合成吸収糸)を用いています。
毎日のように手術していても、糸の結びがしっかりできたり、いまいちであったりします。
勿論これで出血をきたして、動物の命に関わるということはありません。
でも術後に結紮部からの出血がないか、不安な気持ちで朝を迎えることもあります。

医者の側からすれば、シーリングによってこのストレスから開放されるなら、怖いものなしです。
犬の疾病の項で縫合糸反応性肉芽腫を挙げていますが、これは止血に用いた糸が原因で起こる病気です。
糸を使わないシーリングではこのような疾病もおこりません。

本日は猫の去勢でこのシーリングを行いました。
ドイツのERBE社のVIO300Dという装置です。

下の写真は止血用のバイクランプです。

このバイクランプを用いての去勢手術が以下の通りです。
バイクランプで精巣動脈と精管を把持します。
スイッチを入れると発熱し、血管組織を融合します。


上の写真のようにバイクランプでシーリングした箇所は発熱で白く熱変性しています。
この部分をメスを入れカットします。

メスを入れた箇所からの出血は全くありません。
このバイクランプを使用すれば手術時間は大幅に短縮できますね。
それに麻酔時間が短くできることで患者への負担を減らすことができます。
今後、当院はこのバイクランプで止血を実施する予定です。

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